【後編】JCBが基幹システム領域のモダナイズに着手!実装プロジェクトの先進性に迫る
株式会社ジェーシービー(以下:JCB)は、基幹システム内にあるデータの迅速な利活用とシステム資源の最適化を実現するために、基幹システム領域におけるモダナイズに着手しています。日々、膨大なデータ処理が行われているJCBの基幹システムをさらにアップデートすることで、あらゆるサービス提供の可能性が広がります。
前編では、JCB基幹システム開発部の西尾さん、小林さん、子安さんに基幹システムのモダナイズに着手した背景や成果について話を伺いました。後編では、今後の可能性やセキュリティ、この取り組みのやりがいに関してお話を伺います。
■前編の記事はこちらから
■モダナイズによって今後のサービス提供の可能性が広がる
――ほぼリアルタイムのデータを参照できるのは大きな魅力かと感じます。実際のデータはどのような活用が考えられるのでしょうか。
子安さん:これまでの仕組みだと1日遅れでまとめて連携したデータが分析等に活用されていましたが、今後はほぼリアルタイムのデータを参照できるようになります。それらのデータを活用し、お客様に対して安全・安心・便利なサービスを提供していくため、ビジネス部門がお客様と一緒に考えていくところです。私たち基幹システム開発部では、お客様のニーズに合ったサービスを実現できるようにシステム面で全力を尽くします。
――実際に会員さんが得られるメリットもあるのでしょうか。
子安さん:実は、会員さんからのお問い合わせについては、すでにオンライン処理と言われるリアルタイムでデータを見られる仕組みは整っています。その点については、お客様は引き続きリアルタイムのデータを参照できつつ、メインフレームの負荷を軽減するといった効果が得られます。
西尾さん:例えば金融機関とのデータ連携などは、これまで1日遅れのデータだったために、なかなかニーズに応えるのが難しい側面もありました。しかし、ほぼリアルタイムの情報を当社から金融機関に提供できることによって、その金融機関を利用しているお客様はメリットを得られると考えています。
――JCBでは多くの個人情報を取り扱っていますが、今回のモダナイズにおける個人情報への意識についてお聞かせください。
西尾さん:個人情報については全員が高い意識を持って取り組んでいます。これまでメインフレームで持っていたものと同等の暗号化ロジックを今回の参照系の基盤でも採用しています。また、カード業界でPCI DSSと言われるセキュリティ規格があり、それに準じた構成をとっていくため、会員さんは安心して引き続きご利用いただける環境を構築しています。
今回は新しい基盤をAWS上に構築しますが、純正のAWSではありません。当社独自のAWS環境となっているので、私たちのネットワークで守られている部分もあります。この点も安心してご利用いただけるポイントです。
■“守り”から“攻め”に転じるのが今回のモダナイズの大きなやりがい
――IT関連の仕事をするうえで、今回のモダナイズでやりがいを感じる部分はどこでしょうか。
西尾さん:今回を皮切りとしてJENIUSの本格的なモダナイズを進めるため、今後も大きなプロジェクトの立ち上げを予定しています。
名称は仮ですが「JENIUS-NEXT」という取り組みを考えているところでして、すでに申し上げたAPI基盤の構築などと同時に、JENIUSの巨大なアプリケーションを細分化してクラウド環境やオープン環境にオフロードしていく取り組みも進める予定です。また、バッチ処理と言われるイベント型の特定日に一括して行われる処理を一部オンライン化する事も考えています。
このような転機となる瞬間に携われるのは嬉しいですし、やりがいを感じますね。
子安さん:私たち基幹システム開発部はレガシーシステムを保守しているのが主な業務だったのですが、今回のプロジェクトのように新しい技術や基盤に触れられるのはモチベーションがいつも以上に高まります。
小林さん:そうですよね。私はメインフレームに携わっている人は基本的にそれだけに専念するイメージが強かったのですが、今回のように新しい技術やオープンな技術に携われるのは貴重な経験だと感じています。
一方で新しいがゆえにテストの方法は今までとまったく異なるので、どのように品質を担保するのか何が正解なのかを日々模索しながら開発を進めています。今回はメインフレーム上のデータをAWS基盤に移行するのですが、データの整合性担保や、データモデル定義はどうあるべきかなど試行錯誤を繰り返しています。
特にローコードツールは、ある一定の型があれば開発効率化に繋がりますが、複雑な処理には適さないケースもあります。そのため、適切なバランスでのデータ移行が今回のモダナイズでは必要不可欠です。
子安さん:さらに、今の時点で同じデータが見られればよいのではなく、将来の拡張性を踏まえた土台を整えないといけないのも難しいところですよね。
今回のモダナイズの対象は基幹システムなので、安定して稼働することは大前提です。すると従来のやり方で進めるのが実績もあって安心なのですが、今後のビジネスを考えると新しい技術を取り入れて拡張性を設けなくてはいけません。安定させつつ、新しいことを取り入れる施策をスピード感もって進めるのは、改めて大きなチャレンジだと感じます。守りを固めつつ、攻めの技術も取り入れるのは今回の難しいところでもあり、面白いところでもありますね。
――皆さまが高いモチベーションでモダナイズに向き合っているのが伝わってきます。
真保さん:私はメンバーの中でもシステムに携わっている歴が2年ほどと浅く、これまではJCBの業務部署や営業部署におりました。基幹システム開発部2年目でも今回のような貴重なプロジェクトに関ることができるのはモチベーションにつながりますね。
鈴木さん:これはJCBの社風でもありますが、基幹システム開発部のメンバーは担当領域において裁量を広くもって業務に取り組んでいます。これだけ大きな取り組みを自分の考えを持ってチームとして進められるのは素晴らしい環境ですよね。
西尾さん:これまでは“守り”を担っていましたが、一定の守る部分は残しつつ、オープンな技術を使って“攻め”に転じるといった非常に今後が楽しみな施策ですね。
(※インタビューは2024年9月5日実施。情報はインタビュー当時のもの。)