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業界全体の不正被害抑止を推進!JCBが挑む、社会課題に対する取り組み

クレジットカードの不正利用の被害は年々増えており、今や大きな社会問題となっています。その背景の1つとして、ネットでの買い物の増加が考えられます。
 
2021年通年のクレジットカード不正利用被害総額は、統計を取り始めた1997年以来、過去最悪となる330億円となり、今年(※)は半年間で約206億円と、年間400億円ペースで推移している状況です。(※)
また、経済産業省も「クレジットカードシステムのセキュリティ対策の更なる強化に向けた方向性(クレジット・セキュリティ対策ビジョン 2025)」を公表のうえ官民一体となった取組み強化を宣言し、その中でシステムを共同利用することが有効であることを示唆しています。
 
そのような社会問題に取り組むべく、株式会社ジェーシービー(以下、JCB)は、不正被害の抑止につながるツール「MATTE」をリリースしました。
 
今回は、同ツールのパイロット運用や普及活動に携わる、加盟店管理部の藤山さんに、MATTEの開発に込めた想いや導入後の効果、今後の展望についてうかがいました。

多くのカード不正被害の抑止に貢献

不正被害の抑止につながる「MATTE」がどのようなものなのかを教えてください。

 藤山さん:MATTEを一言で表すと、カード会社と加盟店を直接つなぐ「配送停止サービス」専用のWEBサービスです。このサービスは国内初の業界共通システムとして提供するものです。

「配送停止サービス」とは、当社の強みである国内加盟店ネットワークを活用した不正被害の水際防止対策です。カード会社様が検知した不正利用について、JCBが加盟店様に不正発生の事実をご連絡し、不正購入された商品・サービスを発送・提供前に取引キャンセルすることで、水際での被害発生防止を実現する対策です。
JCBでは多様化、複雑化する不正利用への対策として、この「配送停止サービス」に力を入れており、2022年度の実績でも、多くのカード不正被害の抑止を実現しています。

 そこで、今後、この「配送停止サービス」による不正抑止効果をより一層拡大していくために、「MATTE」という仕組みをリリースしました。

この仕組みは、スピーディで効率的な情報連携を目的とした専用システムで、JCB、カード会社様、加盟店様間で、不正情報をダイレクトに連携する国内初の仕組みです。2021年9月に特許取得、その後のパイロット運用を経て、2022年10月より本格運用を開始しました。

この「MATTE」の導入により、これまでのJCBを介した電話による情報連携から、クラウド環境下でのデータによる直接の情報連携が可能となり、よりスピーディな対応が実現。結果、配送停止が成功するケースが増え、不正被害の抑止強化が実現しました。

MATTEの導入によって不正被害の抑止効果は上がったのでしょうか?

 藤山さん:導入後の効果として、カード会社様からの配送停止依頼に対して、実際に不正被害の抑止が成功する割率を高めることができました。これも情報連携のスピードが早くなったことが大きな理由と考えています。

成果の要因は対応スピードを早められたこと

MATTEの導入前後では、オペレーションにどのような違いがあったのでしょうか?

藤山さん:MATTEが導入される前の配送停止サービスのオペレーションでは、カード会社様が不正利用を検知された際、主に電話でJCBへ連絡をいただいていました。その後、JCBから加盟店様に対しては電話やメール、FAX等を用いて配送停止の依頼を行っておりました。そのため、カード会社様や加盟店様は、毎回、電話やメールなどでJCBに連絡を取り、1件1件の情報連携をおこなう必要がありました。

導入前
導入後

加盟店様とカード会社様にとってもかなりの負担となっていたのですね。

藤山さん:そのとおりです。MATTEを導入することで、加盟店様とカード会社様は、データでの情報連携が可能となりました。そのため、これまでのような電話対応の負荷や、コール時間や保留時間などの時間を短縮することができました。
また、WEB上での受付となることで、加盟店様もカード会社様もJCBの営業時間にかかわらず、土日祝日を問わず毎日情報連携が可能になったことも使いやすさにつながっていると考えています。
 
また、MATTEの最大の特徴は、カード会社様からダイレクトに加盟店様に情報連携が可能という点です。間にJCBによる仲介を必要とせず、データにて即時で情報が連携・共有されるため、対応にかかるスピードの大幅な短縮が実現しました。
 
近年では各社様の企業努力によりネット注文から商品発送までの期間が驚くほど短くなってきています。よって、配送停止をより成功させるためにも、また当然のことながら加盟店様にご迷惑をおかけしないためにも、より一層スピーディな情報連携が重要だと考えています。

少しでも早く対応することで被害をより多く防ぎたい

主にカード会社様にご協力いただいてパイロット運用を実施していたとのことですが、協力してくださっているカード会社様からはどんな声が上がっていますか?

 藤山さん:うれしいことに、MATTEを導入したことにより、実感として配送停止が成功するケースが増えたとのお声をいただいています。
また、オペレーションの面においても、実際に業務時間の短縮やミスを軽減できたというお声は多くいただいてます。

 他にも、私たちが想定していなかったお声としては、「MATTEを導入したことによってリソースをコントロールしやすくなった」というものがありました。
どういうことかというと、これまでの電話対応では、専用のスキルを持った電話オペレーターしか業務対応が出来なかったけど、業務内容がデータ入力業務に変わったことで、操作方法さえ習得してしまえば誰でも配当停止の業務対応が可能になった、というものでした。電話オペレーターの採用や研修には相応の時間を要する点については当社にも経験があるため、MATTEの導入によりこういった面でも負担が削減されたというのは、非常にうれしい反応でした。

それはうれしい反響ですね。ほかに「こういう機能があったらいい」などのご要望はありましたか?

 藤山さん:例えば、「依頼内容について追記したいことを書き込める備考欄を設けてほしい」など、当社の業務では想定していなかった、非常に参考になるさまざまな意見を頂戴しているので、これから機能面をブラッシュアップしていきたいと考えています。

ご要望を反映した状態のものを本格運用の開始に間に合わせられたらよかったのですが、それよりも優先すべきは、少しでも早いタイミングで多くのカード会社様、加盟店様にこの仕組みを提供し、少しでも多くの不正被害を減らしていくことだと考えました。そのため、まずはリリースを優先し、段階的に改善していくスタイルをとらせていただくことにしました。

その分、加盟店様やカード会社様のご要望にもしっかりと耳を傾けていきたいので、まずは導入して、ご意見をいただけると大変嬉しいです。

どのブランド様にも使っていただけることを意識して開発

今後はMATTEも業界全体に使ってもらえるようなシステムに育てていきたいと考えているのでしょうか?

藤山さん:まさにその通りです。不正利用による被害は社会課題なので、業界を挙げて取り組んでいくことが不可欠です。よって、JCBだけの仕組みにしてはもったいないと考えています。

今後は、2023年を目標にシステムの機能拡大を行い、ブランドの垣根を越えた業界共通システムとして国内アクワイアラ各社様に機能提供することで、JCBブランドのみならず、カード業界全体における不正対策強化の実現を目指したいと考えています。

加盟店様からしても、JCBだけにしか使えないシステムのままだと、他社様の配送停止依頼は従来通りの方法で行わなければならず、全体の業務時間は短縮できても、業務の種類が増える分、覚えなければいけないことも増えるなど、多少のやりにくさを感じてらっしゃるのではないかと懸念してます。なので、そうした不便を解消するためにも、早急に機能拡張を実現させたいと考えています。

不正利用対策はライバル関係ではなく手を取り合いたい

最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 藤山さん: 繰り返しになりますが、不正被害は業界全体で取り組んでいくべき大きな課題です。不正利用対策に関しては業界各社はライバル関係ではないと思っています。ですので、MATTEをより効果的な不正対策ツールにブラッシュアップし、より多くの企業に汎用的に機能提供していくことが私たちの目標です。それによって、業界全体の不正被害の削減に貢献していきたいと考えています。

今年10月の本格展開に際して、数多くのカード会社様にMATTEをご導入いただきました。
なので、次の目標は多くの加盟店様に導入していただくこと。その結果、より早いスピードで情報連携をし、不正利用対策を実現したいと考えています。だからこそMATTEを知っていただくためにがんばっていきたいと思っています。

最初のうちは、MATTEを導入することによってこれまでの業務フローを変えなければならないなどの不便を感じることもあるかと思いますが、業界各社で協力し合ってよりよい体制を整えていくことで、不正利用の被害を少しずつでも減らしていくことが理想です。

そのためにJCBは、MATTEにさらなる改良を加えることで、カード会社様にとっても加盟店様にとっても役立つサービスとして提供していけたら幸いです。

※出典:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の発生状況」(2022年9月)
※2022年9月にインタビュー実施。情報はインタビュー当時のもの。